08.君のためなら
「そんなイッチーが好きだよ」
笑って告げた冗談。それに返ってくるものは決まって暫しの間と呆れ顔と溜息だ。
そう、これもいつものこと。このやり取りが翻る事は無いし、仮にあったとしても困る話だけれど。
叶えてはいけない恋。触れ合ってはいけない想いだ。
ただ秘密裏に想い合うだけの恋愛がつらいとは少しも思わない。
寧ろ嬉しささえ募るのだ。好きになれて良かった、と。
レンが心からそう思っているように、トキヤも同じ思いを密かに抱いている。
口にしないだけ、表情にしないだけで、二人は確かに通じ合う何かを感じ取っていた。
「好き」の気持ちを。
そうして本音を冗談や嘘で誤魔化してしまうのは、互いに互いの邪魔をしたくないと言う一心からだ。
夢の為にと努力し続けているトキヤを知っているからこそレンは身を引いた。
友として仲間として支え合っていこう、と。
そうすることが互いの為、そしていつかの二人の幸せに繋がるはずだから。
――だからオレは、君のためなら君への想いにさえも嘘を吐く。