07.朝陽を浴びたベッドの上で。
白で揃えたシーツや毛布の間から見える頭は二つ。聞こえてくるものはくすくすと微笑みの混ざった会話とリップ音が少々。衣服を纏わない肩を冷やしてしまわぬよう確りと毛布の中へと潜り込み、二人はその中で手を繋いで互いの温もりを分け与えている。
「…もうレン、ふふっ…笑わせないで下さい」
「だって可笑しいだろう?」
「そうですけど…これ以上言うと翔に悪いですよ、ふふっ」
話題の中心はどうやら同じクラスの来栖翔らしい。彼もまた二人の仲を知っている一人であり、陰ながらサポートしてくれる大切な親友だ。
「それもそうだね…けど、今は二人きり…トキヤが言わない限り大丈夫さ」
繋ぐ手とは反対側の方で抱き寄せ、身を近づける。目の前まで迫った顔にはトキヤの方からちゅっとメロディを奏でたキスを送り、レンはその口吻を深いものへと変える。
「…んっ…ふぅ……」
笑い声が響いていた静かな部屋だったが、今は幸せを紡ぐ音楽が木霊する。くちゅり、まだまだ熱の引かない舌が互いの咥内を行き来し、ゆっくりと舐めるような口付け。詰まる吐息が小さく漏れる度にテンポが速まり、次第に翻弄されていく。
「ンッ…は…トキヤ……」
素肌に触れ合うと安心すると言うが、レンは今、酷く安堵と幸せで一杯だった。キスの勢いのままトキヤに覆い被さるように体勢を変え、肉付のない頬をむにっと撫でる。
動きが鈍くなると同時に火照りを実感する身体。どちらからともなく溢れ出す愛情は、幾度吸収しても足りないと体が飢えを訴えてくる。
「ふっ…んぅ…れん…、レン…」
トキヤの顔が熱によって柔らかく崩れていく。貪りたいのは決してレンだけではない。トキヤの甘い唇がそれを無言で告げ、もっと欲しいと強請ってくる。繋いでいた手の代わりにその腕は確りとレンの首に廻され、離さないと言っているようだった。
そんなトキヤの一つ一つの仕草をも愛おしく感じてならないレンだったが、これ以上は歯止めが利かなくなってしまう。昨夜も想いの分だけトキヤを堪能したばかりだ。甘い夜の後に訪れるゆっくりとした優しい朝が何よりも心地良い。
「…んッ、は……はぁ…トキヤ、愛してる…」
最後に舌を甘く噛んで吸い付いた後、ゆっくりと唇を離した。繋ぐ銀糸は二人の気持ちをも表すが、今はキスだけでも十分に満たされている。
囁かれた愛の言葉もトキヤにとっては身を震わせるものでしかない。全身がレンを求め、足りないと心が喚く。
しかし、それは既の所で唇が言葉を塞いでしまう。
「…はァ……、レン……」
求める言葉は名を囁くだけに終わり、ぎゅっと抱き着くことで昂ぶる感情を抑え込んだ。
「…ねぇトキヤ…トキヤが欲しい…」
「ッ……、」
密着されたことにより、熱の持った中心が再び触れ合う。びくりと肩が踊るのは嬉しさを表しているようなもの。
「…トキヤもオレを求めて? …オレはもっともっとトキヤを感じていたいよ?」
その返事は一つしかないと言うのに、求められるものは言葉。トキヤの口から発せられる愛の言葉、ただ一つ。それには幾度とトキヤの固い理性が邪魔をしてくるのだが、それも含めてレンは彼を好いているのだから不満など無いのだけれど。
「………っ…、すき……、レンが好きなんです…、もっと欲しい、なんて…言わせないでください…っ……」
真っ赤な顔は溢れ出す愛情の所為。止まらない感情にいっそ止め方などあるのだろうか。キスをすればする程、触れ合えば触れ合う程、更に求めたくなり、欲望を暴発させる。
きつく抱き締められたそれがトキヤの出した答え。恥ずかしさにより声音は弱々しく、普段とは打って変わり可愛らしかったが、レンを射止めるには十分過ぎるくらいで。
「…今日はずっと離さない…、」
トキヤの愛をも上回るレンの愛情と、行動力と言うべきか。降ってきたのは噛み付くような熱いキス。
二人の朝はこうして終わりを告げていく。まるで、朝陽が溶けるような――。