17.あなたが好きだと告げた唇

私がレンと寝食を共にするようになって数年。
大きな喧嘩もなく(とは言え言い争うことはよくある話だ)、彼との生活は順風満帆。私は幸せだった。
キングサイズのベッドの中、隣で眠るレンは昨日までの長期ロケの疲れからか、夢の住人になったまま。
身動ぎ一つしないのだがその腕は確りと私を抱き締めて離そうとしない。
少しでも私が動けばレンの腕が追いかけてくるだけ。
暫く会っていなかった事も重なり、随分と甘えん坊になっている。
そんな彼の仕草ひとつひとつを心地良く思っている私も私だが、彼の胸に身を預け眠りに就くことが最大の安堵。まさに今の状態がそうだった。

「………、」

耳を澄まさなくとも聴こえてくる心音、安定した寝息。
今でこそ想いを紡いでくれる唇も無防備に晒したまま、いつまで夢の中にいるつもりなのだろうか。

「…レン、朝ですよ?…レン」

折角のオフだ。少しでも長く時間を共有したいと思う。
疲れを癒して欲しいとも思うが、出来れば沢山話したいし、触れ合いたいとも思う。我侭かもしれないが。

「…ん……、」

今日は一体、何度目のキスで目覚めるか。
まるで賭け事のように、少し伸びた前髪を掬い、額に口付けを落してみる。
それから閉じた瞳。鼻先、頬。ゆっくりと下降していく唇に擽ったそうに腕に力が篭もる。
緩んだ腕はそうして私をその中に収め直し、彼は再び眠りに就こうとする。
私はそれが心地良い。
この腕に抱き寄せられることが。私に居場所をくれることが、堪らなく好きだ。

「ふふっ…」

幸せが笑みとなって零れていく。
安心した眠りを求めていた彼が安心して眠っているということ。
それは私の存在失くしては成り立たない。
例え、それが自惚れでしかなかったとしてもこれ以上幸せな事はない。
彼に安心を与える存在は私だけでいい。私だけであって欲しい。

「……大好きですよ…レン…」

次はどんな言葉をかけようか。次は何処へキスをしよう。
貴方が好きだと告げた唇に私も想いを伝えるのは、あなたが目を覚ましてからにしよう。



2012.1.12
何年後パラレル早く沢山書きたいなぁ…もう思う存分好き好き言いまくってちゅっちゅしまくればいいのに!(*∩∩*)
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