03.水曜、世界は喜びに溢れ
「っレン…、」
密着した状態では身動きも敵わない。
「おはよ、イッチー…」
朝目が覚めると私の上にはレンが居て、いつからぎゅっと抱き締められていたのかも分からない。
現実に戻ってきて早々キスを受け、身体は昨夜を思い出して火照り出す。
何時からこんなにも理性が緩くなってしまったのか、問うたところで、キスの熱に思考を奪われるだけに終わる。
「…ン…っ、んぅ…」
甘く受け入れた舌を己のと擦り合わせ、往来する唾液を食事代わりにする。
幾ら貪っても満たされることがなく乾くばかり。
レンとこうして過ごしていく内に、私はおかしくなってしまった。
「…ねぇレン…もっと…、」
欲張りだとは自覚している。全ては欲しいものに、欲に、気持ちに素直になった結果だ。
どれも心を温める愛情の所為。子どもみたいに欲しがりになってしまっている。
「…そうやってオレを求めて、トキヤに求められるのが好きなんだ…束縛されるのだってオレは嫌いじゃないよ」
甘噛みは囁きと共に唇、頬、そして耳へと続く。
「おや…私に縛られたいんですか?レンは…」
くすくすと微笑みが返ってきて、レンは少しだけ拗ねた顔をする。
「うん、されたいかな。…なーんて、言うと思った?」
「ええ、その方が安心するのでしょう?」
「……、…今は沢山キスした方が安心するかな」
照れ臭そうに抱き着かれ、首元を甘く噛まれる。それは催促の印。
「…ッ、…本当に、レンは朝が弱いのですね…、可愛いですよ、子どもみたいで」
「…っか、かわいい…!?おいおい止してくれよ、せめてカッコイイと言ってくれなきゃ」
「ふふ、あんまり可愛いことをしていると私があなたを食べてしまいますからね?」
布団の中、互いに衣服は纏っていない。
触れ合っていた肌を撫でるように動くトキヤの手付きがいやらしさを増してくる。
「…ッ、ちょっと、イッチー…!くすぐったいって…っ」
朝だけは強がりだ、本当に。
「……私がどれほどあなたを好いているか…あまり分かって頂けていないようなので」
「じゃあお願い、イッチー。オレに分からせてよ、どれだけイッチーに愛されているかを」
「当然です、嫌と言う程分からせてあげましょう」
相変わらず体勢はそのまま、レンが覆い被さったままだが、その首に腕を廻して引き寄せ、足りないと喚く唇を奪ってしまう。
噛み付くようなキスは所有の証を付けるかの如く、自然と絡み合っていく舌が二人の愛を助長させていく。
響き始める愛のメロディ、キスはやがて呼吸さえも奪われる。
それはまるで眩暈がする程の。
「はぁ…ふ…んっ、」
乱れた呼吸が好きだと告げる。けれど触れ合えば触れ合う程、思いは更に溢れ出して止まらない。
止め方も分からないが。止めたいとも思わない。
「…っ、すき……、」
感極まり、口から溢れ出すのは昂ぶった想い。
先に言葉にして告げた方が負けだと言う暗黙のルールに勝てた例しがないトキヤが、キスを交わしながらも瞳で笑うレンと目が合うと、もうブレーキは利かない。
勿論、満たされるまでずっとだ。
苦しくなろうと続くキスの嵐の中、レンの愛に溺れていくトキヤはただただ喜びに満ちていた。