06.みんなでお正月っ!

注意。
(レンとトキヤは言わずもがな恋人同士です。
(トキヤとHAYATOは双子です。
(分裂ネタと区別するために、HAYATO表記ではなくハヤトにしてあります。
(那月と砂月も分裂しています。
(ハヤトは砂月と両片想い(一応恋人らしい関係)です。
(登場人物達は分け隔てなくみんな仲良しです。
(ハヤトの口調が迷子ですすみません…。











「おはやっほ〜!!レンくんッ!!起きて起きて〜!!」

 喧しい声に飛び上がる朝。否、眠っていた背中にダイブされ、否応なしに起きただけに過ぎない。
 まだ開かない目蓋を擦りながら重たい頭を上げて振り向く。その視界の先に映った人物は見知った存在、恋人であるトキヤの双子の兄、ハヤトだ。
 彼はトキヤとは正反対の性格の持ち主で、所構わず騒がしい点は玉に瑕だが、それもまた彼の良さであるからこそ老若男女に好かれているのだろうと思う。

「…お…おはよ、ハヤト……早いね………」
「ノンノンノン、レンくん!」

 立てた人差し指を左右に振り、ハヤトはレンの唇にその指先を押し当てる。そして輝くのは太陽よりも眩しい笑顔。

「ん?」
「せーのっ!おーはやっほ〜!」
「………お、おはやっ…ほー…?」

 決めポーズとばかりに両手を広げ、テレビから聞き慣れた挨拶を繰り返すハヤトに釣られて、レンも眠い最中同じようにしてみせる。

「うん!今日も元気に過ごそうね〜!!」
「そうだね…、オレも元気に過ごしたいから悪いけど…そろそろ下りてくれるかな」
「はっ…ごめんにゃっ!」

 ずるずるとシーツから這い出るレンと同時にハヤトもベッドから下りていく。
 しかし、その代わりなのか部屋中をくるくると歩き始め、様子はいつも以上に落ち着かない。
 寝ぼけ眼でうろちょろする姿を捕らえつつ、レンはベッド脇に掛けてあったバスローブを身に纏う。レンにとっては朝の九時前ともなれば俄然眠り足りないのだが、来客が来ている以上、起きざるを得なかった。
 少しずつ覚醒してくる思考。ちらりとカレンダーを横目で確認する。間違いない。今日は久しぶりにトキヤと共にオフの日だった。
 それなのに最愛の姿は見当たらず、代わりに部屋に居たのがその兄と来た。溜息と気付かれないように一息吐くことで不満は誤魔化した。何はともあれまずはこの彼をどうにかしなければならない。

「それで?朝早く訪ねてきた理由ってのは何なんだい?こんな時間に来たんだ、何かあったんだろう?」
「そうそう!今日はぁ〜!レンくんにぃ〜!……ん?…あれ?……あっ、あったあった…ん、じゃじゃーんッ!!お誘いのお手紙を渡しに来たんだにゃ!へへっ!」

 ハッとした顔の後、思い出したようにポケットから慌てて取り出したものはくしゃくしゃになった一通の手紙だった。
 自筆の宛名、見覚えのある字。これはどうやらトキヤが書いたものらしい。これで朝早くからトキヤの姿が見えないことにも頷ける。

「……お誘い?デートのかい?」
「ぶっぶー、正解はぁ〜…みんなでお正月パーティーッ!!」

 両腕を高く広げて喜ぶ様を見る限り、相当楽しみにしているようだ。いつも見せる笑顔も今は一段と際だって輝いている。だからソワソワと落ち着かなかったのだろうか。
 本当にトキヤとは双子だと言うのに、ハヤトは彼とは正反対で見ていて飽きない。良くも悪くも同じ顔。トキヤからは見られないくるくると変わる表情に見惚れそうになりかけたところでレンは首を振り、本題に戻ろうと向き直る。

「パーティー?」

 落ち着かないハヤトはソファに座らせることで静止させ、大人しい間に自身の身支度を済ませてしまおうと言う魂胆だ。
 しかし、それも数分で玉砕されてしまうのだけれど。

「うんっ!みんなでしよう!って話になったんだよ〜。あれ〜?もしかしてレンくんはトキヤから聞いてないのかにゃ?」
「……初耳だね」

 ポリポリと頭を掻いて苦笑を零すレンの方へと向かってソファから身を乗り出していたハヤトが、ここに来て知らされた新事実にみるみると顔が青ざめていく。仕舞いには背もたれにだらんと項垂れ、口許は尖り口だ。きっとこの口が彼なりの憤りを現す表情なのだろう。

「…ッ!!ガガーン!ショーック!!あれほど言っておいてねって言ったのに〜!ごめんにゃ〜レンくん…でも大丈夫!準備はこれからだしまだまだ間に合うよ!」

 全身で表す喜怒哀楽が彼の魅力か。このハヤトを扱える砂月の実力も如何ほどか計りかねるが、トキヤも含めたパーティーならそれも悪くない。二人きりも捨てがたいが、こうして揃って何かをすることがレンは嫌いではなかった。

「それは良かった、この為にハヤトはオレを呼びに来たってところかい?」

 漸く事態を飲み込めたレンが改めて確認を取る。冷蔵庫から取り出した未開封のミネラルウォーターを片手にソファへと腰掛け、ぽんぽんとハヤトの頭を撫でてやる。それはまるで子どもを褒める仕草と同じだった。

「大当たりぃ〜!と言うことでっ!レンくんもっ!来てっ!くれるかにゃあ〜!?」

 片手を握り拳に変え、体をリズムに乗って左右に揺らしながらズイッとレンの前に差し出されたそれはマイクそのものだ。気分は司会者だろうか、それとも幸せへの道先案内人か。その答えは解らないが、楽しみが待っていることには違いない。

「もちろん、喜んで参加させて貰うよ」

 答えは二つ返事だった。それ以外に有り得ないだろう。
 ダブルデートならぬダブルパーティーの幕開けだ。否、パーティーと言うより新年会のようなものだろうか。レンとトキヤ、そして砂月とハヤトの四人はかれこれ数年来の仲だった。きっとこの関係はこれから先も変わらずにあると信じている。
 だからこそ共に過ごせる時間は大事にしたい。それはレンだけでなくハヤトや他の二人も同じ思いだった。

「みんなでした方がたっのしぃーに決まってるもんね〜!それに、今年もみんなと過ごせてボクはホントにほんとーに!嬉しいんだぁ〜…うん、よぉし!もうトキヤも砂っちゃんもお部屋で準備してるから、ボクは先にお手伝いに戻るね!レンくんも早く着替えて来てにゃあ〜!」
「オーケー、支度が出来たら急いで向かうよ。オレが行くまでにトキヤと砂っちゃんの機嫌を損ねさせるなよ、お兄さん」
「らっじゃーだにゃ〜ん!!」

 過ぎ去った嵐の如く静けさが身に染みる。だが、騒がしい朝も偶には悪くない。否、これから過ごす四人での年明けパーティーを思えば、寝不足であろうと何ら問題なかった。
 急いで支度を済ませよう。きっとあの手紙を書いたトキヤもレンの登場を待ち侘びていることだろう。
 心が浮き立つ。そわそわと落ち着かないのはハヤトに似た所為か、それとも単なる恋煩いか―――。








 ガチャリ、ドアを開く前から聞こえてくる騒がしい声に笑みを零しつつ、レンは扉をくぐった。すると忽ち良い香りが漂ってくる。パーティーの支度は順調に進んでいるようだ。

「あ、やっと来ましたね、レン。お早うございます。それから、改めてあけましておめでとうございます。…ふふ、彼に起こされて大変だったでしょう?」

 遅れて登場した騎士ならぬレンの姿に目敏く気付いたのはやはり最愛のトキヤだ。動かしていた手元は隣で作業をしていた砂月に任せ、ひと時の恋人時間を堪能しようとレンの元へ駆け寄っていた。

「あけましておめでとう、イッチー。先に出ていくなんて酷いじゃないか。まあ、それなりに…手紙が嬉しかったから問題ないけどね」
「手紙…恥ずかしいから他の方には言わないでくださいね?この歳にもなってラブレターなど…」

 近寄れば何の躊躇いもなくレンの腕の中に収まるトキヤが其処には居た。そう、人の目もないこの場では遠慮など不必要だ。ここぞとばかりに恋人を堪能しないで何時堪能出来ると言うのか。
 それでも少しの恥じらいが残るが、以前に比べれば随分と素直に応じてくれるトキヤの変化がレンにとっては何よりも嬉しかった。
 今ならキスをしても許される。大事な大事な恋人同士の時間なのだ。少しくらい人目があろうと、お預けは御免だった。

「オレは嬉しかったけどなぁ…やっぱり直筆に込められた愛はひと味違うね――ん……」
「っん……ふふ、そう言って頂けるのでしたら……」

 レンとトキヤの周囲を舞うのはピンク色のハートたちだ。その半分はハヤトの演出なのだけれど、幸せ惚けしている二人にはそれすらも視界に映さないほど、目の前の幸せで手一杯の様子だった。
 幸せそうに微笑み合う二人に対し、心からの祝福と歓喜で一杯のハヤトも、近くで眺めているその表情や視線からは何処か羨望の色が滲んでいた。そう、ハヤトにも恋人の存在があるのだ。彼らのように触れ合いたい存在が。

「おい、そこ!いちゃつく前に手伝え!」

 そんな三人を他所にキッチンで一人料理支度に追われていた砂月の咆哮が飛びかった。雷の一つでも落ちてきそうな気配が一瞬だけ漂い、それにハッと現実に戻った二人だったが、彼らの表情はそれでも温かいままだった。
 悪かった。そう言って戻ってきたと二人と、拗ねたままリビングのソファから動かないハヤトの頬はリスの頬袋よりも大きく膨らんでいた。
 それも全ては目の前で幸せを分け与えて貰った結果、どうやら砂月不足が発生してしまったらしい。
 しかしこの反応も致し方ない現象だ。ハヤトだって恋人が居て、その彼が同じ空間にいる。触れ合いたいと思うことに疑問は浮かばない。それどころか欲ばかりが次次と溢れ出して止まりそうになかった。

「まぁまぁ、砂っちゃん。ハヤトもキスがしたいみたいだよ」
「…………、それであれか」
「はぁ…我が兄ながらすみません、砂月さんにはご迷惑ばかりを…」
「なに、大したことじゃねぇ。それより、ここ。任せて良いのか?」
「勿論です。ね?レン」
「ああ、もちろんだよ、砂っちゃん。…ただし、パーティーの時間までには帰ってきてね」

 ニヤリと笑むレンの言葉に含まれた意図。それに気付いたのは砂月ただ一人だ。滅多にお目にかかれない笑みがトキヤにはより一層眩しく見えた。

「砂っちゃんばっかりお話しててずるいにゃあ!ボクともお話して!」

 クッションを胸に抱き、拗ねたハヤトの声が届く。それに適当な返事と舌打ちをした後、砂月の口許が柔らかく微笑んだことはハヤトには秘密。すぐにでも迎えるであろう幸せな時間を堪能して貰うべく、レンとトキヤは揃って料理の仕込みに勤しむことにした。


 そして数時間後。
 幸せ一杯のハヤトと、幸せながらも自らも料理されてしまったトキヤの拗ねた姿が見えるのだが―――この話はまた別の機会に。




レントキ・砂HAYAに萌えている…!
お世話になってるフォロワーさんへのお年賀の捧げ物でした…!(2012.1.3)
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