19.彼色キス
朝。静かな部屋に響くのはトキヤの歌声。
声慣らし程度ではあるが、口ずさむようにメロディやフレーズを紡いでいる。
トキヤが座るベッドには未だ夢の中のレンがいて、安定した寝息にふっと微笑みが零れた。
「…本当に…… (愛しい人だ…) 」
ふと振向いてレンの髪に指を絡ませる。ついでに頭を撫でることも忘れない。
触れれば「好き」が溢れ出し、「幸せ」がトキヤを満たしていく。
本当に、好きになれてよかった。
心からそう思う。それはふわふわと心を満たし、温めていく。
幸せを歌うトキヤの声に優しさが乗り、眠っているレンの耳にも確りと届けられる。
目覚めは最高。そんな朝も今日が初めてではない。
だからこそ、二人は幸せだった。
トキヤがもう一度、レンに触れようと身体を近づける。
しかし、機会を待ち侘びていたレンの腕が伸びてきて、トキヤは一瞬にして捕まってしまった。
「――んっ」
同時に捕まえた唇が幸せの音符を飲み込む代わりに愛が溢れていく。
唇へのキスはレンが起きてからと、隣で寝姿を堪能していたトキヤだったが、不意打ちを喰らった格好に驚きを隠せない。
何度か瞬きをした後、求められるまま貪り合う朝はこれで何度目か。
そんな朝も悪くないのだけれど。
「…おはよ」
そう言って笑うレンの唇は、今日もトキヤ色に艶めくのだった。