21.不意打ち
「なぁイッチー。オレの名前呼んで?」
その言葉と共にレンに後ろから抱き締められる。
「な、名前…ですか?」
「そ、名前」
人目が無いとは言え、抱擁には照れくささが残る。
普段から触れ合うことは避けている二人だが、偶には伸びてきた手を払う事なく受け入れる時があっても良いのかもしれない。
ちらりとトキヤは顔だけ軽く振り向くことでレンの顔色を窺ってみる。
自然と目が合えば、にこりと微笑んでくるレンの様子は、普段と何ら変わりないようにみえるのだけれど。
「…レン。神宮寺、レン。私が最後に愛した人、神宮寺レン」
トキヤは自分を離さないレンの手を取り、その指先に口付けを落としながら、求められる言葉を、名前を紡いでいく。
「…ッ、えっ、ちょっ、イッチー!?」
「…なんです?こんな唐突に名を呼べなんて不安から生じるものでしょう?」
「……っ」
まさかそんな風にされるとは微塵も思っていなかったレンは動揺を隠せない。
予想以上の言葉を返されて、流石のレンもかぁぁっと顔が火照るのが分かる。
してやられた気分にもなった。けれど、こういう気持ちも悪くない。
「私は貴方だけを愛していますよ、レン」
確実な安堵を与えてくれるトキヤの言葉は、いつだって魔法みたいにレンの心を煌めかせた。
「……本当…、大好き…」
ぎゅっと、ぎゅっと強く抱き締めて、好きだと、改めて実感して強く願う。
この幸せが遠い未来にまで続きますようにと。