二人分を抱く腕
二人の部屋を包む温もりは一人分だけだった。
仕事が多忙になるに連れ、疲労が溜まっていく体。
適度に休みもあり、ストレス解消はしているものの、最大の効果はやはり最愛との眠るひと時だ。
「おやすみなさい…レン……」
居ない彼に告げる。最愛の香りが残るベッドに横たわってから、トキヤが眠りに就くまでは数分。
寂しさが募る一人寝は己を抱く事で誤魔化した。
「ただいま、トキヤ」
夜も更けた頃。
長引いたロケから帰還したレンは、灯りの点いたままの部屋に期待を寄せてみたのだけれど。
「…トキヤ?」
反応のない部屋に少しの不安が過ぎる。
荷物は玄関に放置して部屋を覗く――が、レンの視界に映り込んだのは寂しさに己を抱くようにして眠る最愛の姿だった。
「…オレには散々暖かくして眠れだの何だの言う癖に…」
在る筈の気配を感じ取りホッと胸を撫で下ろしたレンが向かった先。
ベッドで毛布も掛けずに眠っていたトキヤの頭をそっと撫でる。
「明日は…午後出か。だったら起こすのは止めておこう」
カレンダーを見遣り、トキヤの仕事を確認する。
出かける前の準備等の時間も考慮した上で、起こす事は気が引けた。それに、自分も疲れていたこともある。
独りごちてから、レンは起こさぬようにそっと布団を掛けてあげた。
そして、手洗いから寝支度までを済ませたレンが、トキヤの隣に潜り込むまで時間は掛からない。
「おやすみトキヤ…」
「……ん……、…れん……」
寝言なのか判別のつかない朧ろ気な声音には笑みが浮かぶ。
「今日も愛してたよトキヤ…明日はもっと愛してる…」
ぎゅっと抱き寄せ、二人はそうして同じ夢に身を委ねたのだった。