Double liar
「レン…っ!」
少し怒ったような咎めるようなその呼び方が好きだった。
「聞いているんですか?レン!」
「…ははっ聞いてるさ」
「全くあなたって人は本当に…!」
例えば遅刻や課題の提出忘れにしろ、親身になって誰よりも怒ってくれる。
冷たい言葉は優しさの裏返しだと思えば嬉しさが止まらない。
「笑ってる場合じゃないでしょう!?」
「だって嬉しくて」
素直に告げれば呆れた眼差しが増える。
けれどそれもレンにとっては心地良いのだからどうしようもない。
「……もう知りません」
「冗談だって、怒るなよそんなに」
「私はあなただからこそこうして――………いえ、何でもありません。度が過ぎましたね…すみません」
ライバル以上に心のどこかで大切に思う人だから心配だってする。
声を上げて怒ったりもする。
その思いに気付いているレンは、そんなトキヤの態度が見たくなり、時折こうして悪戯な罠を仕掛けるのだ。
「…実はね、課題はやってきたんだよこれでも。…ほら。合ってるかはあまり自信ないけど、良かったら見てもらえないかい?」
「…レン…、ええ、いいですよ勿論」
照れ臭そうに教科書の間から取り出された提出期限間近の課題。
それを受け取ったトキヤはその回答欄から伝わるレンの一生懸命にこなした姿に笑みを零さずにはいられなかった。
「…おおよそですが、合っていると思います。と言うか、レン。あなたは出来る人なんですからもっと提出物には気をつけてはいかがですか?」
「うーん、気をつけてはいるんだけど…中々ね。……あ、」
何かを閃いたらしいレンがパチンと指を鳴らす。
「?」
「次の課題と提出曲のことで勉強会しないかい?おチビちゃんを誘ってもいいし」
「それは名案ですね。次の課題曲は私達三人での曲ですし…時間の都合つけられるようにしておいてくださいね、レン」
「勿論さ、楽しみにしてる。…色々と」
「…ッ、レン…!」
耳打ちされた甘い声。その言葉の意味は二人だけの秘密だ。
次の課題提出日まであと数日ある。限られた時間の中でレンとの駆け引きを楽しむスリルもまた、トキヤにとっては恋の楽しみの一つ。
そして、トキヤがレンの罠にわざと掛かると言うそれも、あながちレンの計画のうちに過ぎないのかもしれないけれど。
そうして二人は互いに秘密の恋を楽しんでいるのだった。