食卓の花




「ただいま帰りました」
「おかえり、イッチー。お疲れ様」
「レンもお疲れ様でした。夕飯は…済ませてしまいましたか?」
「うん、軽くね。イッチーが帰ってきたらまた食べようと思って作っておいたんだ」
「ありがとうございます。まず着替えてきますね」
「オーケー」
「……その前に」

ぎゅ。と、キッチンへ向かうレンの背中を抱き留めた。

「……ふぅ……」
「…イッチー?」
「こうしていると一日の疲れが浄化されるようです」
「おいおい、背中だけで満足なのかい?」
「…いえ、出来れば正面からがいいですね」
「うん!そうこなくっちゃ。おいでイッチー?」
「ええ、レン…」

ちゅ。と、唇を交わして補給する。

「さぁオレだけのイッチーを見せておくれ?」

なでなで。と、くしゃくしゃに髪をいじられて、まだ残っていた「アイドル」姿もなくなった。
跳ねた髪はすとんと落ち、「プライベート」のトキヤがレンの目の前に。

「まったく…、此処へ帰ってきた時点でもう私はあなただけの私だというのに…」
「オレなりの愛情表現ってやつかな?…なんてね。本当はただイッチーを独り占めにしたいだけさ」

前髪を持ち上げられて、額に唇が寄せられる。
リップ音に次いで告げられる想いは一日一日を過ごす度に深くなる。
抱き締める腕が強まるのも、触れ合いが多いことも、溢れ出る想いを受け止めて欲しいから。それはお互いに思っていることだけれど。

中々ふたりきりの時間を作れない環境にいるからこそ、二人はふたりきりの時の愛情表現を誤魔化したりしない。
想いが織り成すまま互いに受け止め合い、そして紡ぎ合う。
そうして続けてきた関係はきっとまだまだ深いものへと変わっていく。そうして磨かれていく。

「ふふ、私たちの居場所にいる間は、どうぞ思う存分私を独占してください。この美しい瞳で私だけを見ていてください」

する、と頬に手が伸び、慈しむような眼差しと共に指の腹で頬を撫でられる。
綻んだ目元は愛情に満ちていて、穏やかなのに強かな想いが二人を、空間を包んでいく。

「今夜はずっとイッチーを離さないよ」
「おや、『今夜も』の間違いでしょう?」
「そうだった」
「ふふ、食事にしましょう。触れ合いはその後に――いいですね?」
「もちろんさ」

ふわりふわり、愛の花が飛ぶ。
二人の食卓はいつも愛で溢れている。





2014.04.03
ナチュラル同棲済みのふたり。1日に1回は食事を共にするふたりがすきです。
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